過去のスレッドですがそこそこ有名な伝説スレなので、ご紹介したいと思います。
結婚式が近づいて過去を振り返ってたら
わりとネタ人生だったのでまとめてみた。
スレが立ったらぼちぼち書きこんでく。
立った。スレ立ては初めてなので文章稚拙だがスマソ。名前は全部(仮)。
すべてのはじまりは、とあるデパ地下の寿司屋でバイトを始めたことだった。
いや、すべてのはじまりは「NO」と言えない性格に育ったことか…。
何となく高校を卒業して可もなく不可もない大学に入学した俺。
便所飯するほどじゃなかったが友達と呼べる友達もおらず
大学とバイト(当時はピザデリバリー)の往復だった四年間。
就職活動もロクにせず、何となく「公務員にでもなるか」と思い、卒業してから勉強を始めた。
まあしばらくニートできるくらいの貯蓄はあったんだよ。
大学時代どこにも出かけてないからなって言わせんな恥ずかしい。
真剣に勉強してないから当然受かるはずもなく
だらだらと勉強してるようなしてないような
八割方ニート生活を送って早三年が経とうとしてた。
ここで人生を大きくかえる出来事が起ろうとは…。
だが会話という会話は【母としこ】と【妹めぐみ】のみの生活だった俺には、
女の子と言葉を交わすということが非日常的すぎてだいぶ混乱気味だった。
「ご、ごめん、えと、あの、」
「三年生のときゼミ一緒だったんだヨー^o^」
話の内容によると、久しぶりに大学の女友達で集まったら、
思い出話になって俺の話になって俺と話したくなって電話したらしい。
「それでね、よかったら今度、林くんと会いたいナーって^^*」
なに?なんなの?俺の時代はじまっちゃうの??
魔法使い覚悟してたけど勇者になっちゃうの??
悪い、書きためたぶんいっこ飛ばしてしまった。
ある日のこと。
もはや2ch閲覧グッズと化していた鳴るはずのないiPhoneが鳴った。
知らない番号からだった。
「もしもし?林くん?」
「えっ、あっ、はい……??」
間違いなく林は俺なのだが、相手は知らない女の子の声だった。
「わたし、佐藤でーす。覚えてないよねー?^^:」
佐藤…………………知らん。
そして、二人で会うことになった。デートだ。人生初のデートだ。
俺はこの日のためにわざわざ服を買いに行ったぐらい興奮していた。
ぶっちゃけ佐藤さんはめちゃくちゃ可愛かった。
俺はキモくならないようにドモらないように必死に振舞い、
笑顔の彼女に癒されながら思い出話や近況を楽しく話した。
「すごい、すごいよお、夢を叶えるために勉強頑張ってるなんて><*」
「いや、そんなことないって…俺頭悪いから…。」
俺は相当現状を美化して話していた。
一通り話して落ち着いたところで、彼女は立て続けに言った。
「今日、会えてよかったぁ。わたし、感動しちゃった」
「それでね、わたしも林くんの夢を支えられたらなって思ったの」
「うんとねでもね、あたしの口からちょっと説明しづらくて」
「ほら、あたしって口下手だから変な誤解与えちゃいそうで怖いんだぁ」
「近くに友達が来てるんだけど、その人すごいベテランの人だから、その人の話聞いてみて!」
「いま近くにいるみたいなんだけど呼んでも平気?」
そして、あれよあれよという間に佐藤さんより少し年上の女性が現れた。
すでにおわかりいただけたであろうか。
プギャーしていただいて構わん。
俺は化粧品やサプリメントに35万もつぎ込んでしまった。
いわゆるデート商法でありネズミ講にハマってしまったのだ。
(彼女はネズミ講とはまったく違うと終始主張していたが)
↑ネットワークビジネスというらしい
母としこに嘆き悲しまれ、妹めぐみにバカにされ
自分自身もそんな古典的な手に落ちてしまったことが悔しくて
大量の化粧品とサプリメントを前に生きる気力を失いかけていた。
だが貯蓄も尽きはじめ歳も無駄に食ってもう半ニートはしてられなかった。
しかしバイト探しも面倒くさい。
「榎本さんにお願いしといたから!面接いっといで!!」
そのとき、母としこが助け舟を出してくれた。
榎本さんというのは、かつて母としこがパートで働いていた、とあるデパ地下の寿司屋の店長だった。
あまり気力が出なかったがせっかく斡旋してくれたので言われるままに面接に行ったら
「おお、君が啓介か!うん、としこさんから聞いてるよ。うん、で、いつから来る?」
と陽気なおっさん(といってもギリギリお兄さんライン)にいきなり言われ、
面接という名の顔合わせのような感じでいきなり採用が決まり働くことになった。
えのサン(榎本さん)はスゲーいい人で、歳の離れた兄貴みたいだった。
ミスしても「あとでぶっとばす!」と言いながらフォローしてくれたし
パートのおばちゃんたちも、まるで息子のように可愛がってくれた。
俺のすさんだ心も少しずつ回復してきて、普通にレジに立つこともできるようになった。
ただそれ以外に、もう一つだけ俺の心を癒してくれるオアシスがあった。
それが、隣のとなりのケーキ屋さんの山本さんだった。
隣のとなりのケーキ屋さんは、たまに廃棄品をおすそ分けしてくれた。
彼女はいつも笑顔で「ちょっとですけど、どうぞ^^*」と笑顔で持ってきてくれた。
「おっ、山本ちゃんいつもありがとね!!」
えのサンがそう言っているのを聞いて名前を知った。
山本さんは完璧美人ではなかったが、いつもニコニコしていて、
「あ、ど、ドモ…」と俺が挙動不審にしても笑顔で会釈を返してくれた。
でも、半年間経っても一年間経っても交わせるのは挨拶だけ。
もうちょっと、ほんのちょっとでいいから進展が欲しかった。
それでもマルチにひっかかって女の子に対してビクビクになった俺にとって
そして女子と会話を交わす経験なんてほとんどなかった俺にとって
自分からきっかけを作るなんてのはとても無理な話だった。
でも想いは募るばかり。
もはや一年も片思いしてると我慢の限界だった。
「榎本さーん、おつかれさまでーす!」
「おっ、ゆうた~サンキュウな!!」
ケーキ屋には、ただひとりだけ男の子が働いていた。
歳はまだ二十歳かそこらだと勝手に思っていた。
えのサンがゆうたと呼ぶこの男の子も、たまに廃棄ケーキを届けてくれた。
(……これだ!!)
俺は一世一代の勝負にでることにした。
「あの、森くん、よかったら、あの、よかったら今日終わったら呑み行こう…。」
廃棄ケーキを届けてくれたあとにひっつかまえて小声で誘ってみた。
『森』というネームプレートを付けた、そのゆうたという男の子は
一瞬びっくりしたような顔をしたが「いいですよ。」と了承してくれた。
この子に話すキッカケを作ってもらえれば…きっと何か動き出すはずだ。
(頼むよ…!)
俺は年下の子にすがる想いでそうお願いした。心の中で。
居酒屋で生とタコわさをつっつきながら、とりあえず世間話をした。
森くんは22歳で、ケーキ屋と介護職のかけもちをしてるらしい。
俺はマルチのことは伏せたが公務員浪人からいまの仕事に就いたことを話したりした。
「で、どうしたんです急に。」
そりゃ聞かれるわなと思いながらも、ここで言わなきゃ男がすたると思い
「う、うん、そうだよね急に、ごめん、あの…」
ためらいながらも山本さんのことを話した。
そしておそるおそる出した俺の気持ちは
森くんのストレートパンチを受けることになる。
「山本さん、彼氏いますよ。」
うわあああああああああ
「たしか、付き合って三年くらいですよ。」
うわあああああああああああああああああああああ
そりゃそうだ。あんな可愛い子に彼氏がいないはずがないのだ。
ちょっとでもお近づきになりたいと思った俺が馬鹿だったのだ。
こんな鈍臭くて何の取り柄もなくこの歳でフリーターの俺が浅はかだったのだ。
「………そう、ですよね…。」
もはや、何の言葉も出てこなかった。
「なーんだ。そういうことかー。」
森くんはなんだかガッカリしたようにそう言いながらも
意気消沈して言葉も出ない俺の顔を気にしているようだった。
「そんな落ち込まないでくださいよ。」
「うん。。。」
もはや顔もあげられないほど落ち込んでいた。
一年間の片思いが…淡い恋心が…。
森くんは、俺の頭をチョンチョンとつっついて、笑顔で言った。
「自分、フリーですよ。」
「…はあ。」
………。
……はあ??
そっちかwwwww
え?
「自分と付き合いましょうよ!」
いや、ちょっと意味がわからないです。
「えーと…。」
「林さん、誰とも付き合ったことないしDTなんでしょ?」
「う…まあ…。」
「いざ山本さんがフリーになって付き合うことになったとき
経験もまったくないDTじゃ色々まずいと思うんですよねー。」
「う…。」
「だから自分と付き合っといたほうがいいですよ!」
「はあ…。」
「ね、そうしましょー!」
「いや、でも…。」
「ね!色々教えてあげますから!!」
その日、俺に初めて恋人ができた。
…残念ながら男だったが。
ごめんなさい
現状をよく理解できていないままフラフラの帰り道。
えーと、俺は失恋して、彼氏ができて、って、何かおかしくね?
『ゆうたです。啓ちゃん今日はありがとう。これからよろしくね!!』
家についてiPhoneを見たら森くんからメールが来ていた。
別れ際にアドレス交換をしたんだった。
あ、やっぱり現実なんですよね…これ。
『そうそう!僕のことはこれからゆうたって呼んでね!!』
そういえばいつの間にか啓ちゃんって呼ばれてるし。
ネタバレぜんぜんおkですよwww
当時は異常事態だと思ってたけど
思い返してみるとけっこーベタベタなんでwww
いや、これは何かの間違いなのだ。
あのときは押され負けてしまったが何かおかしくないか。
いやいやおかしい。絶対おかしい。次の出勤のとき森くんと話そう。
そう覚悟を決めて、二日後出勤したときに
ケーキ屋に森くんの姿をこっそり確認しながら
えのサンしかいないバックヤードに入っていった。
「おはようございます。」
「おお、啓介!ゆうたとよろしくやってるか!!」
「………!!!!」
ち ょ っ と ま て 。
「えのサンなんで知ってんですか…!!」
「ん?なんのことだー?」
「だから俺と森くんが付き合ってることですよ!!」
「ゆうたはしっかりしてるし、お前にぴったりだよ!」
「いやいやいやいやいや違うんですって!!」
「幸せにしてやれよ!!」
あの野郎しゃべりやがったーー!!!!
その日の帰りに従業員出口から出てくるのを待ち伏せして、森くんに声をかけた。
「ちょっと森くん…。」
だが俺の顔をチラッと見ただけで反応してくれない。
「ちょ、ちょっと…。」
うろたえる俺を無視してすたすたと歩いていってしまう。
「…ちょ……。」
うーーー。
「……ゆ、ゆうた…。」
「なにっ?啓ちゃん♪」
名前で呼んだら笑顔で振り返るゆうた。
このド男好きが…!!
「てかメール返してよ!!」
「いや、そんなことはどうでもよくて…。」
「よくないっ!!」
「いや、てか、えのサンが知ってたんだけど、どういうこと…。」
それにはゆうたもびっくりしていた。
「ほんと、誰にも言ってないよ!榎本さんに聞いてみてよ!」
そんなはずあるか!!
あるはずもない!!
「ああ、でも榎本さん俺が芸ってことは知ってるよ。」
「えっ!!」
「俺が…あ、うん、知ってる。」
珍しく言い淀んだが、どうやらホントに言ってはないらしい。
衝撃だったのはケーキ屋のみんなも寿司屋のみんなも
ゆうたが芸だということを知ってるというのだ。
俺だけ知らずに一年以上も働いてたなんて…。
そして後にえのサンから誰から聞いたのか問い詰めたら、
「俺は啓介から聞いたんだぞー?w」と言われた。
そういえばえのサンは『ゆうたをよろしく』としか言ってなかった。
俺がゆうたを呑みに誘ったのを見て、えのサンはカマかけただけらしい。
ナンテコッタイ/(^o^)\
そしてえのサンのことに気を取られて、交際うんぬんのことはすっかり忘れてた俺。
そんなどたばたしてる間に、初デートに行くことになってしまった。
ゆうたとメールのやりとり。
『啓ちゃん、デートは男から誘うもんだよ。誘って!』
『いや、無理。デートなんかしたことないし』
『えー!じゃあ、みなとみらい行こうよ。夜景きれいだよ。』
『じゃあ、そこで』
『違うの!誘って!!』
………。
『みなとみらい行こう』
『いつ行く?休み合うかな。』
『わかんない』
『わかんないじゃなくて相手の予定聞いて!』
あーもう面倒くせえなあーー!!!
彼の中では受け攻め確定してるんですな…まぁDT奪う前提だし
俺は何の気も使ってない服装で初デートに向かった。
ゆうたはちょっとこじゃれた格好をしていた。
二人でワッフルを食ったり水辺を散歩したり
夜になったらベンチに座って夜景をみたりした。
何をしてても楽しそうなゆうたを心で遠目にみながらも
一体俺は何をやってんだか…。という気持ちになっていた。
でも、自分の思っている芸のイメージとはちょっと違った。
いま思えばオカマと芸を混合していたんだと思う。
ときどき可愛いことを言う以外は、普通の男とかわりなかった。
ふざけて腕を組んでくることはあったが
行為はもちろんキスもしたことはなかった。
恋愛ってこんな程度なんだろうか…。
それ以降、ゆうたリードで俺が誘って月に一、二度出かけたり
世間話的メールのやりとりをしたり、仕事終わりにちょっと話したり
付き合ってるのかもよくわからない些細な日常を三ヶ月ほど繰り返した。
だいぶゆうたとのやりとりにも慣れてきたが、恐れていた事態があった。
そう、家族にバレることだ。
母としこは心配性でおせっかいで、妹めぐみは俺を完全に見下してる感がある。
バレたらとんでもない騒ぎになるに違いない。
幸いにも、えのサンは付き合ってることを誰にもしゃべってないみたいだった。
しかし、俺は自ら爆弾を落としてしまうのだった。
「けーすけパソコンかして。」
妹めぐみは、いつもこう言って俺の部屋に乗りこんできてた。
「いま使ってる。」
「ニコニコ見てるだけじゃん。」
「うるさいな。」
「30分だけ貸してよ。」
「いつもそういってどかないだろ。」
といったやりとりを毎度のようにしていた。
自分で買えよと思いながらも、結局貸してしまう俺だった。
しかし二時間以上も部屋に居座られるとやることもなくてイライラしてくる。
「いい加減どけよ。」
「いーじゃん。勉強でもしてたら?」
ほんと妹がいないやつがうらやましいと思うよ。
妹萌えとかしてみたかったぜ。
「けーすけパソコンかして。」
その日、俺はベッドに横になってゆうたのメールを見返していた。
「…別にいいけど。」
「めずらしーパソコンやってないんだ。」
家にいるときはずっとパソコンの前に座ってるから
たしかにめずらしいことだったかもしれない。
「ねー電源どうやってつけんの?」
モニタの電源をカチカチやっていた。
「メールしてんの?」
「うん。」
「ねえ、最近よく出かけるしメールしてるし、彼女できたの?」
「そう。」
「てきとーに返さないでよ。彼女できたの?」
「うるさいな。」
「ねえ、彼女できたの?」
「うるさいな。パソコンやってろよ。」
「だから電源つけてよ。ねえ、彼女??」
話聞いてねえコイツ……。
「しつこいなー。彼女だよ。」
それを聞いためぐみは突然部屋を飛び出して
「おかあああさああああーーーん!!!」
と叫んでリビングに駆け込んでいった。
ちょおwwwwおまwwwwwww
その後は嵐のようなひどい有様だった。
母としこは「ウチに連れてらっしゃい!」しか言わないし
妹めぐみはけいすけに彼女プギャーwwしかしてこなかった。
いかんいかん。これで男なんか連れてきた日には超大型台風が起こる。
その騒動からしばらく経った後日のことである。
出勤してえのサンに挨拶したら
「おお、啓介!さっきお母さん来たぞ!!」と言われた。
ちょwwおかんwww
いや落ち着け俺、前から母としこはたまに買い物に寄ってた。
うん、おかんが来たからといってバレたわけじゃ
「ゆうたの話しといたからな!!」
…バレてました。
えのさんww
「なんて、うそだ、すまんwとしこさん知ってるもんかと思ってしゃべってもうたw」
「すまんじゃないっすよおー!!彼女っていってあったんすよー!!」
「まあ、としこさんが働いてるころからゆうたいるし大丈夫だろw」
「大丈夫じゃないですよー…。男と付き合ってるなんて知ったら…。」
「安心しろ。としこさんは器の大きい人だからな!!」
だめだこの人…お気楽すぎる…いまにはじまったことじゃないが。
やべえ…家帰りたくねえ。。。
ゆうたにメールしようと思ったが何と言っていいのやらだし
帰らないわけにもいかないし覚悟を決めるしかなかった。
「おかえり。今日ソーメンにしちゃった。簡単でごめんねー。」
が、しかし家に帰っても何事もなかったかのような母としこの対応。
「めぐみは?」
「もう寝てる。明日サークルの試合だから。」
「そ、そっか。」
用意されたソーメンをずるずるとすすりながらも
なぜか向かいに座っているおかんが気になってしょうがなかった。
「啓介。」
「な、なに。」
「次の休み、ゆうた君連れてらっしゃい。」
キタ━━━(;´Д`);´Д`);´Д`);´Д`);´Д`)━━━━!!!
もう逃れられんか。
『ゆうた。次の休み、おかんがうちに来いって…』
メールしたら、すぐに電話がかかってきた。
「啓ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃない…。」
「うん…ごめんね、なんか。」
「謝ってもしょうがないだろ…。」
そうなのだ。
ゆうたは何一つ謝らなきゃいけない行動を取ってないのだ。
母としこがゆうたに何を言うのか、ゆうたがとしこに何を言うのか。
息子が男好きと知った母の気持ちを考えると夜も眠れなかった。
こんなことなら付き合わなきゃよかった。
さっさと別れておけばよかった。
まだ続く感じです。
dat落ちしてなかったら、明日よろしくお願いします。
てか俺も眠くなってきたww
めっちゃワクワクwww
めっちゃワクワク
「けーすけパソコン貸して。」
「…あと10分待って。」
「いいけど。」
懲りずに妹めぐみが部屋に乗りこんできた。
俺が待てをかけたらめぐみは俺のベッドに腰かけた。
「ねえ、けーすけの彼女、男なんだってね。」
思わずマウスが硬直する。
それは何か色々間違ってるぞと突っ込む余裕はなかった。
「…母さんなんか言ってた?」
「ううん、今度ゆうた君っていう子が来るってゆーから
誰かきいたらけーすけと付き合ってる子だって聞いてびっくり。」
そりゃびっくりするだろ…。
「ゆうた君にひどいこと言ったんじゃないの?」
「なにが。」
「けーすけ無駄にプライド高いじゃん。」
「無駄にってなんだよ。」
「付き合ってどれくらいなの?」
「…四ヶ月くらい。でも普通に友達と変わんない。」
「付き合ってるのに友達とかわんないんだ。」
「変わんないよ。俺芸じゃないし。」
「フーン。ゆうた君かわいそうだね。」
「………。」
めぐみにもっともなことを言われたようで俺は胸が騒いだ。
そんなこんなで、ゆうたがうちに来ることになった。
そしてなぜめぐみもいるのだ。できればいないでほしかった。
「としこさんお久しぶりです!」
「ゆうた君いらっしゃい~久しぶりね!元気?」
「はいー元気ですよー!」
ファーストコンタクトから胃がキリキリした。
とりあえず和やかな雰囲気なんだよなこれ。
修羅場になったりしないよな。頼むから荒れないでくれ!!
しかし、俺の予想は大きく外れることになった。
母としこは終始ニコやかにゆうたと話しているし
めぐみも最初は興味本位で入りこんできていたが
すぐにゆうたと打ち解けて三人で楽しく話していた。
いつの間にか夜になり、ゆうたのお泊まりがいつの間にか決定していた。
自分でもびっくりしたのだが、俺は初めてこの時にゆうたが一人暮らしであることを知った。
しまいには三人で楽しくカレーを作り始めて、俺が仲間はずれっぽくなってた。
え、なに。なんでそんなに和んじゃってんの。
俺は最後まで緊張がとけなかったが
楽しくカレーを食ってテレビを見て談笑をして
俺の部屋にお客様用の布団がゆうたのために敷かれたが
めぐみがゆうたを自分の部屋に連れてって(仲良くなりすぎだろと思った)
おしゃべりの続きをしてたので、俺はリビングで母としこと二人きりになった。
ゆうたがきてから初めての沈黙。
うう…まだ三人で盛り上がってくれてたほうがよかった。気まずい。
でも、これだけは聞いておきたくて、自ら話を切り出した。
「母さんは俺が男連れてきて変だなとか嫌だとか思わないの?」
特にびっくりした様子もなく「そぉーねえ。」とおかんはしばらく考えて
「あんたがずっと独りでいるよりずっといいかな。」と言った。
「啓介、休みもずっと家にいるし、友達と遊んだりもしないから心配してたのよ。」
「そりゃ、ちょっと驚きはしたけど。」
「ゆうた君は気が利くし、とってもいい子だし。」
「啓介のことを大切にしてくれる人がいて母さん嬉しくないはずないでしょ。」
俺のことを大切にしてくれる人…。
母としこの言葉が胸にささって、その夜、俺の隣で眠るゆうたの顔を改めてみた。
たしかに、付き合ってから、ゆうたはずっと俺のことを大切にしてくれた。
こんな風に俺のことを想ってくれたのは人生ではじめてだ。
俺はゆうたに何をしてやれたんだろう。
「ゆうた君かわいそうだね。」
めぐみの言葉が思い出された。
「ゆうた。今度、海にいこうか。」
俺は、初めてゆうたのリードなしにゆうたを誘った。
「うん!楽しみにしてるね!」
ゆうたはいままでで一番の笑顔でそう答えた。
海でひとしきり遊んで、夕焼けの浜辺に二人で並んで座っていた。
俺は一人でソワソワしていた。やるぞ。やるぞ俺!!
日が落ちて、まわりに人がいないのを確認してから
俺はおもむろにたちあがってゆうたを後ろからギュッと抱きしめた。
「啓ちゃん…?」
「ゆうた…ありがとう。」
それしか言えなかった。
でも、それだけでゆうたは泣きだしてしまって、しばらく泣きやまなかった。
好きだったら、手も繋ぎたかっただろうし、キスも、性行為だってしたいだろう。
でも、ゆうたはデートに誘う以外俺に何一つ強要してこなかった。
そばにいられるだけでそれでよかったんだって言って、ゆうたは大いに泣いた。
つられて俺も泣いてしまった。ありがとうとごめんが混ざり合った気持ちだった。
NEXTページへ続きます。
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